百枚の着もの
近頃、ウインドウショッピングすると、若い女の子向けの服がかわいい。
今年の流行は私が好きな服ばかりで、見るだけでたのしい。
しかし着るわけにもいかないので…
こんなふうに着たかったのだ、と、落書きをする。
着ることが絶対ないけど着てみたいロングドレスや
ふわふわの服などを描いて遊ぶ。
こういう絵を書くと、必ず思い出すのが「百枚のきもの」という絵本だ。
貧しい移民の女の子が、毎日同じ服をきて学校に来るのに
「家に百枚のきものがあるの」といいはり、みんなにいじわるされる
…というつらいストーリーなのだが…。
低学年のころ、いとこの家で借りて読んだその絵本は
ずっと、私に強い印象を残していた。
ただし、その今でいう「いじめ」のテーマはきれいさっぱり忘れ去り
「素敵なドレスの絵を描く女の子の話」として。
彼女は家に、本物のドレスではなく、百枚のきれいなドレスの絵を
しかも、着ているのはクラスメートの顔に似せた画を描いていたのだ。
二十歳のころ、再読して、私って何を読んでいたんだろうとあ然とした。
(大人になって読んだ本でも、それは結構ある)
しかし、近頃は、そういう読みとり方があってもいいかなと思うようになった。
おかげで、今もこうして、落書きをして楽しんでいるし、
本を読んで、心にひっかかるものが、一人ひとり違うのも
また、いいものだという気がする。
※今は、「百枚のきもの」は「改訂されて「百枚のドレス」で出版されている。