キクイタダキとおもしろ江戸人物伝

もらっていた回文が少なくなったので
「回文が底をつきました」と数人の回文作者さんたちに
メールしたら…

 

そのうちの一人、ぶらん亭席主さんから
「回文もいいですが、ひとつ、ほら話を作りませんか?」と返事が来た。

先日、キクイタダキの写真をブログに載せていらっしゃったが…

 

「昔、菊井忠顕(キクイタダアキ)という武将がいて、
いろいろあって・・・、
で、それからその鳥はキクイタダキと呼ばれるようになりました」
というような伝説ホラ話をでっち上げようと考えたんですが、
イデアだけで終わってしまいました。
これ、書かれませんか?」

というメールだった。

 

頭に花を飾る鳥_e0414863_18512544.jpg

(これが、その記事に乗っていた写真。ブログからお借りしてきた。

  かわいいとしか言いようがない。メジロより小さい鳥らしい。)

 

歴史には相当、疎いけど、妄想するのはおもしろそうなので
書きたいです、と返事した。

 

時代考証なんて、しなくていい、武将でなくても
学者や殿様でもいいんじゃないか、とも書いてあったが
なんの手がかりもないと、妄想のしようもなく
図書館で、よさげな参考資料はないかとキョロキョロ。
学者だったら江戸時代かなぁ。

読みやすいほうがいいなと
児童書コーナーで「おもしろ江戸人物伝」ってのを
パラパラしてみた。

 

すると、なんとなんと!!

菊井忠明さんがいたのだ!
明と顕はちがうけど。

なんと!なんと!である。
読んで見たら、もっと、もっと、なんと!なんと!だったのだ。


児童書とはいえ、そのまま書き写すのは大変なので
ちょっと、あらすじを。

ついでにイラストもつけてみた。


☆☆☆


菊井忠明は、江戸中期の漢方医さんでした。

困ってる人からはお金を貰わない、お金持ちからはふんだくる

…そんな人情に篤い人柄で

町の人から尊敬されて…いたかと思いきや

やぶ先生と呼ばれて、あまり尊敬はされていませんでした。

 

というのも、

好きなことは、お酒を飲むことと

薬草とり、と称して、つまみになりそうなものを

医院の裏手の小山に探しに行くことで

しょっちゅう酔っぱらっているし

酔っぱらって転んで着物をどろだらけにしたり

川に落ちそうになったり

小山に行ったら、やぶの中をほっつき歩いてるしで…

 

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それでも、具合が悪いと呼びに行けば、すぐやってきてくれる、

やぶと言われつつも、腕はよい。

親身に治療してくれるということで

みんな先生のことが好きでした。

 

面と向かって「やぶ先生」と呼べる間柄。

 

そういうある日、小さなお祝い事に誘われて

やぶ先生、ご機嫌で出かけました。

 

しかし、朝になっても先生は帰ってこないと

助手の久太郎さんが、青い顔でみんなのところへやってきました。

 

さあ、大変とばかりに皆は探しにでかけました。

「相当、千鳥足だったからなぁ」

「ご機嫌でしたよね」

「どこかで寝てるんならいいが…」

 

おーい!せんせー!

そこら中を探しても見つかりません。

そこで、そうだ、前に落ちそうになったことのある川も探そうと

みんなで向かったのです。

どうぞ先生落ちてませんようにと、久太郎はこぶしを握りました。

 


川の岸辺は草が茂って見渡しても草ばかり。

 

そこに、チラチラと黄色いものが見えます。

チラチラチラチラ動いてます。

とりあえず、そこへいって見ると

 

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「先生っ!」

やぶ先生は、そこに座って眠り込んでいました。

そして、その頭の上にはキクイタダキが。

 

「菊井の頂にキクイタダキ…」

久太郎は安心したあまり思わず、駄洒落がでてしまいました。

 

その声で、目を覚ましたやぶ先生。

久太郎は、いかん、聞かれたか?と小さくなったけれど

いえいえ、慌てて起き上がった先生は、みんなに謝りました。

 

それから、お酒を飲みすぎないよう

それを忘れないよう、先生は「菊井忠明」と名乗ることにしました。

先生、それまでは菊井玄千という名だったのです。

 

その後、やぶ先生が

お酒をひかえるようになったかどうかはわかりません。

 

☆☆☆


とまぁ、こういう話だったんです。

 

びっくりですよね~ほんとにいるとは!!!

 

 

 

 

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と、いうほら話。

…ばれてたかなぁ。。

 

 

さて、本当のキクイタダキのもっとたくさんのかわいい姿は

ぶらん亭ブログの記事でご覧ください。

リンクさせてもらいました。

 

burantei.exblog.jp

 

黄色い頭の羽は、興奮したときに逆立つらしい。

見慣れぬ先生にキクイタダキはきっと興奮しただろうと

イラストでは、逆立った羽に。