「海岸文庫 ちどり通信」という本を読んだ。
二十数年前に閉鎖してしまった団地の小さな文庫にまつわるお話だった。
三つの章の主要登場人物がかかわりあって一つの物語になっている。
物語自体は、ちょっと無理があるような気がするところもあり
不審なまま解決してないこともあるのだけれど…
最後の章の、主要登場人物、入江三咲さん。
文庫を立ち上げ、閉鎖した後もその本を自宅に引き取って
本だらけでごたごた暮らしている三咲さんには
本が好き、年齢も近いということだけで、親近感や
共感を感じた。ちょっとうらやましさも。
ストーリーにちょっと文句をつけたけれども
ひさしぶりに、そうそう「文庫」っていいよねと思ったのだった。
そもそも、「文庫」という言葉。
心ときめく。
現実の文庫は持てないだろうと、ホームページの名前に「文庫」を
つけたりしたこともあった。
昔、そのホームページに書いたことがある、懐かしい文庫のことを
ここにちょっと書きたい。
小6のころ、近所に閉鎖された文庫があった。
ドアが壊れていて、開いたままの状態で、入っても誰にも怒られない。
雑然と本が積んであった気がする。
窓から差し込む光に、埃が舞い踊っていた。
毎日、放課後、一人でもぐりこんで本を読んだ。
何冊くらいあったのか、どんなジャンルの本があったのか
全然覚えてないが、数冊だけ、読んだ本をおぼえている。
うーん、少女小説なのに、おいしいものがでてこない!という
あらぬクレーム感想。あまりお気に入りにならず。
クオ ヴァディス
ネロ=悪いヤツ。と強烈にインプットされた。
さっき調べたら、ポーランドの小説だそうだ。
クラクラ日記 坂口美千代
なんとなく気持ちが悪かったとしか、おぼえてない。
でも題名のインパクトで忘れられない。
なんとなくハイジにでてくる
クララっぽいお話を期待して読み始めた…
小6なので、無理ない連想としよう。
その印象が強く、大人になっても読み返していない。
そして、
ライラックの花の下で オルコット
これは、その当時、あることは知っていたけど
絶版で読めない本だったので、うれしさは何百倍!だった。
で、おもしろかったのだけど…訳が…
直訳すぎて、なんとなく頭の中に薄絹がかかったような情景しか浮かばない。
それが残念でもあり、よその国感が増したりした。
今でも、至福の読書の時間と言えば
いつも、あの差し込む光にやたらと舞う埃を思い出す。
「文庫」はそれを思い出させるキーワードなんだと思う。
袖なしでも暑かったおとといあたりから
一気に長袖着ないと寒いくらいになってしまった。
長袖で種まきしてきた帰り道。
風にえのころぐさが揺れていた。